3.2 Class A Block からのIPアドレスのサブアロケーションについて  本題に入るまえに、現在のIPアドレスの割り当て機構について、簡単に説明 しましょう。  インターネットでは、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)より大 きなブロックがそれぞれの地域NIC(InterNIC, RIPE-NCC, APNIC)に割り当てら れ、その中の適当なブロックがローカルNIC(たとえばJPNIC)に割り当てられま す。  JPNICの場合APNICの管轄になるので、JPNICで手持ちのブロックがなくなる と、APNICに申請し、APNICから新たなブロックを割り当ててもらいます。JPNIC に割り当てれたアドレスブロックをさらに細かく分けたものを、JPNIC会員を 通じて、エンドユーザーに割り当てるという形をとっています。このように、 日本のユーザーに今後どのようなIPアドレスが、割り当てられるのかは、APNIC に割り当てられたアドレスブロックに依存することになります。  今までは、202.XXX.XXX.XXX, 210.XXX.XXX.XXXなど、従来でいうところの ClassCのIPアドレスのブロックがJPNICに割り当てられていました。このため ユーザーに割り当てられるアドレスもClass Cのブロック範囲になっていました。  しかしながら、最近になってIANAからAPNICや他の地域NICに、いわゆるClassA のブロックが割り当てられました。この割り当て範囲は次のようになってい ます。 地域NIC ブロック アドレス範囲 APNIC 61/8 61.0.0.0 - 61.255.255.255 RIPE-NCC 62/8 62.0.0.0 - 62.255.255.255 InterNIC 63/8 63.0.0.0 - 63.255.255.255  ClassAのブロックを細かく分けて利用するという方法は、今回急に始まった わけではなく、すでに何年も前から検討されており、実際に39/8のブロックを 使って、1995年の1月から11月にかけて運用実験が行われました。これについ ては、RFC1797にその実験でのアドレスの使用方法が、またその結果がRFC1797 にまとめられています。  ClassAのブロックはClassCのブロックの4倍のアドレス空間があります。実 際には過去にClassAの単位で一部の組織に割り当てられ使用されているために、 ClassAの範囲全部とはいきませんが、それでもClassCよりはるかに広いアド レス空間を利用できるため、IPアドレスの枯渇を防ぐために、ClassAのブロッ クのサブアロケーションを行うことは、インターネットの運用上必須のものと なります。  本稿執筆時点では、まだAPNICからJPNICに対して61/8のブロックが割り当て になってはいませんが、すでにRIPE-NCCからは62/8のブロックからの割り当て が行われ、実際にエンドユーザーがClassAの範囲に入るIPアドレスを利用して います。したがって、APNICからJPNICへ61で始まるブロックが割り当てられ、 実際に日本のエンドユーザーが利用するようになるのも時間の問題と思われま す。  このように、従来ClassAとよばれていたアドレスブロックを、分割して利用 するためには、運用上注意しなければならない点があります。そのもっとも重 要な点は、クラスレス(class-less)ルーティングの運用技術です。ここでクラ スレスとクラスフル(class-ful つまりA,B,Cといったクラスに依存するかどう か)のルータの挙動について簡単に説明してみましょう。  以下のようにルータa,b,とホストcがつながっている例を考えます。 ----a--------b--- - - - - ---c   1 2 1 2 a1が接続になっているネットワークが61.2.3/24で、a2とb1の間のネットワー クは 202.12.30/24だったとします。またb2の先にはいくつかのルータを経て、 61.10.20/24というネットワークに接続になったcというホストがあったとし ます。  ここで、もしルータaがクラスフルだった場合、ルータaはおろか61.2.3/24 に接続になったどのホストも、ホストcと通信することができません。これは ルータaがクラスに依存したルーティングを行うため、a1とa2のネットワーク のクラスが違うと(この場合ClassAとClassC)、a1の自分のI/Fのアドレスの属 するクラス(つまり61/8)をすべてa1側にあると判断してしまうためにbより先 に接続になった61/8の一部のネットワークに対するルーティングを行うことが できなくなるためです。  ルータaがクラスレスの場合は、a1側に接続になっているネットワークは 61.2.3/24であると判断するため、この場合は問題なくホストCとのルーティン グを確保できます。  この例は直接接続になっているネットワークでの例ですが、ISPの境界が、a1 とb2にあり、a,bが同一ISPであった場合を考えてみましょう。このISPを通過 するような通信において、aやbのルータがクラスフルであった場合は、深刻な 通信不能の障害を起こすことが容易に想像できると思います。つまりClassAの ブロックから分割したIPアドレスの割り当てが行われた場合、クラスレスの運 用技術が必須となります。  最近のワークステーションやルーターは、多くがクラスレスなルーティング に対応しつつあるとはいえ、一部には対応が不完全な製品があります。またク ラスレスな機能をもっていながら、出荷状態ではクラスフルな挙動を示す製品 もあります。これらの点を注意してクラスレスな運用を行えるよう心がける必 要があります。この他に注意する点についてはRFC2036にありますので、そちら を参照されるのがよいでしょう。